前回の記事で「最高のキーボード」を手に入れ、文字入力は驚くほど快適になったはずです。
しかし、デスクワークにはもう一つ、忘れてはならない「主役」がいます。 そう、「マウス」です。
あなたは今、PCに付属していたマウスや、1,000円程度の安いマウスを「なんとなく」使っていませんか? もし、「夕方になると手首がズキズキする」「広い画面でのカーソル移動が面倒くさい」と感じているなら、それはあなたのせいではありません。道具が合っていないだけです。
今回は、手首の負担を極限まで減らし、作業スピードを倍速にする「高機能マウス」と「トラックボール」の世界へご案内します。

1. なぜ、仕事ができる人は「高いマウス」を使うのか?
「クリックできれば何でもいいじゃん」 昔の私もそう思っていました。しかし、デスクワークのプロたちが1万円以上するマウスを選ぶのには、明確な理由があります。
① 「広い画面」を楽に移動するため
以前の記事で紹介した通り、作業効率を上げるために私たちは「広い画面(ウルトラワイドモニター)」を導入しました。
ここで新たな問題が発生します。「画面の端から端まで、カーソルを動かすのが大変」問題です。 安いマウスだと、何度もマウスを持ち上げては動かす「マウス・テニス」状態になり、手首を酷使します。
高機能なマウスは、センサーの感度(DPI)が段違いです。手首を数ミリ動かすだけで、カーソルが画面の端までスッと届きます。この「微細な操作感」が、疲労を劇的に減らしてくれます。
② 「手首のねじれ」を開放するため
普通のマウスを握る時、手のひらは机に向かっています。実はこれ、手首の骨(橈骨と尺骨)がクロスしてねじれている「不自然な状態」なんです。 この状態で8時間過ごせば、手首や肩が痛くなるのは当然です。
最新のマウスは「エルゴノミクス(人間工学)」に基づき、「自然な握手の手つき」で持てるように設計されています。ねじれが解消されるだけで、驚くほど肩が軽くなります。
2. 「マウス」か「トラックボール」か?
ここで運命の分かれ道です。 右手の相棒には、大きく分けて2つの派閥があります。
A. 高機能マウス派(MX Masterなど)
- 特徴: 従来のマウスの形だが、形状やボタン数が進化しているタイプ。
- メリット: 誰でも違和感なくすぐに使えます。Excelの横スクロールや、コピー&ペーストをボタン一つで実行できる「時短機能」が豊富です。
- こんな人へ: クリエイティブな作業(画像編集など)が多い人。新しい操作を覚えるのが面倒な人。
B. トラックボール派(親指操作)
- 特徴: 本体を動かさず、親指でボールをコロコロ転がして操作するタイプ。
- メリット: 「手首を一切動かさない」ため、腱鞘炎対策としては最強です。マウスを動かすスペースが不要なので、狭いカフェのテーブルでも快適に作業できます。
- こんな人へ: とにかく手首や肩の疲れを取りたい人。省スペースで作業したい人。
最初はトラックボールに抵抗があるかもしれませんが、ユーザーの半数以上が「一度慣れたら二度と普通のマウスには戻れない」と語るほどの快適さがあります。
3. 手首を救う「最強の相棒」6選
機能性、疲れにくさ、そしてデスクでの佇まい。 用途や予算に合わせて選べる「間違いのない6台」を厳選しました。
【王道にして至高】Logicool MX Master 3S
「迷ったらこれを買え」と言われる、マウス界の絶対王者です。
- ここが凄い:
- 「MagSpeed電磁気スクロール」というホイールが魔法のようです。1秒に1,000行スクロールでき、長いWebページやExcelも一瞬で移動できます。
- 親指部分にある第2のホイールで、横スクロールも自由自在。
- 独自の静音クリック仕様で、カチカチ音がせず、静かなオフィスでも気兼ねなく使えます。
- 注意点: 少しサイズが大きく、手が小さい人には重く感じるかもしれません。
【持ち運べるハイエンド】Logicool MX Anywhere 3S
「MX Master 3Sの機能は欲しいけど、カフェや出張先でも使いたい」という人のためのコンパクトモデルです。
- ここが凄い:
- 王者MX Master 3Sと同じ「魔法のホイール」とセンサーを搭載しながら、手のひらサイズに凝縮。
- 「ガラス面」でも操作可能。 カフェのガラステーブルでマウスパッドを広げる必要がありません。
- 小さいので手の小さい女性でも扱いやすく、ポーチに入れても邪魔になりません。
【腱鞘炎への処方箋】Logicool Lift
「普通のマウス操作がいいけど、手首が痛いのは嫌だ」という人のための、縦型マウスです。
- ここが凄い:
- 見た目は独特ですが、握ってみると「誰かと握手する角度(57°)」で自然にフィットします。手首のねじれが解消され、筋肉の負担が減ります。
- MX Master 3Sよりも一回り小さく、日本人の手に馴染むサイズ感です。
- この形状に変えるだけで、長年の肩こりが嘘のように消えたという声も多い名機です。
【コスパ最強の優等生】Logicool Signature M750
「1万円は出せないけど、良いものが欲しい」という方に最適な、価格と機能のバランスが最高のモデルです。
- ここが凄い:
- S/M/Lのサイズ展開があり、自分の手の大きさに合わせて選べます。(多くの人にはMかLがおすすめ)
- 勢いよく回すと高速スクロールに切り替わる「SmartWheel」を搭載しており、Web閲覧が快適です。
- クリック音が非常に静かで、カフェや図書館での作業にも向いています。
【トラックボール入門】Logicool ERGO M575S
「トラックボール、ちょっと試してみようかな?」という人のための、ロングセラーモデルです。
- ここが凄い:
- トラックボール界のスタンダード(標準)モデル。これを選べば間違いありません。
- 本体を動かさないので、デスクが書類で埋まっていても、膝の上でも、場所を選ばずどこでも操作できます。
- 単三電池1本で最長2年も持つ驚異のスタミナも魅力です。
【動かない贅沢】Logicool MX ERGO S
トラックボールの快適さを極限まで高めた、プロフェッショナルモデルです。
- ここが凄い:
- 本体の底面に金属プレートが入っており、傾斜角を0度と20度で切り替えられます。この「20度」が、手首に絶妙な休息を与えてくれます。
- 重量感があり、デスクに吸い付くように安定します。
- M575Sよりもボタンが多く、よく使う機能(コピー、貼り付けなど)を割り当てて作業を効率化できます。
まとめ:右手に「自由」を与えよう
キーボードで「指」を労り、マウスで「手首」を守る。 これで、あなたの身体にかかるデスクワークの負荷は最小限になりました。
たかがマウスに1万円以上? と思うかもしれません。 ですが、整形外科に通う時間や、手首の痛みで集中力が切れる損失を考えれば、これほどコストパフォーマンスの良い「医療費」兼「投資」はありません。
まずは、量販店で実物を握ってみるのも良いでしょう。 あなたの右手にぴたりと吸い付く、運命の一台が見つかるはずです。
Next Step:長時間座っても疲れない「玉座」を探す
モニター、キーボード、マウス。 デスクの上の「操作系」はこれで完璧に整いました。
しかし、どれだけ良い道具を使っても、座っている「椅子」が悪ければ、腰は悲鳴を上げ続けます。 次回は、デスクワークの腰を守る最後の砦、「ワークチェア(オフィスチェア)」について解説します。
数十万円する高級椅子だけが正解ではありません。予算に合わせた「疲れない椅子の条件」をお教えします。





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