前回の「解説編」では、ドッキングステーションがシステムの安定稼働とPCの摩耗低減において果たす技術的役割について詳述しました。
市場には多種多様な接続デバイスが存在しますが、4K以上の高解像度出力や高速データ転送、そして安定したPD（Power Delivery）供給を同時に維持できる製品は極めて限定的です。本記事では、「40Gbpsの帯域幅」「PD 3.0以上の給電規格」「物理的な放熱設計」をクリアした7つの製品を、技術的特性別に分類して提示します。
01. 【ハイエンド・プロフェッショナル】通信安定性と拡張性の最大化
高負荷なデータ処理や多機能接続を前提とした、エンジニアリングおよびクリエイティブ向けの最上位機種です。
① CalDigit TS4
合計18ポートを搭載し、業界内で最も信頼性の高いThunderbolt 4ドッキングステーションとして評価されているモデルです。
- インターフェースの網羅性:
18ものポートを備え、背面に主要な接続を集約することで、デスク上の配線を完全に隠蔽可能です。SD 4.0 UHS-IIスロットを前面に備え、高解像度メディアの転送速度を最大化します。 - 2.5GbE有線LANの搭載:
標準的な1GbEの2.5倍の帯域を持つ有線接続をサポート。NASとの大容量通信や、パケットロスを許容しないリアルタイム通信において圧倒的な安定性を担保します。 - 98Wの安定給電:
全ポートを使用している状態でも、PC本体へ最大98Wの電力を安定供給し、システム全体の電圧降下を防止します。
ポチップ
② Anker 778 Thunderbolt Docking Station (12-in-1)
最大100Wの給電能力と、Windows環境における圧倒的な多画面出力性能を両立した実力派モデルです。
- 最大4画面の同時出力:
Thunderbolt 4、HDMI 2.1、DisplayPort（×2）を駆使し、Windows PCにおいて最大4画面（4K/60Hz）のマルチモニター環境を構築可能。広大なデスクトップ領域を必要とするデータ分析やマルチタスク業務に最適化されています。 - 前面30W急速充電ポート:
PCへの100W給電とは別に、前面のUSB-Cポートから最大30WのPD供給が可能。モバイルデバイスをドック経由で最短時間で充電できる論理的なポート配置となっています。 - 垂直型・省スペース設計:
筐体を垂直に設置するデザインにより、デスク上の専有面積を最小化。限られたスペースでも高度なシステムハブを構築可能です。
ポチップ
02. 【デザイン・インテグレーション】熱管理と空間効率の両立
アルミニウム筐体による自然空冷と、デスク上の視覚的ノイズを最小化するための物理設計を持つモデルです。
③ Satechi Thunderbolt 4 Dock
筐体の薄型化を追求し、モニター台の下部などの狭小な隙間への設置に最適化されたモデルです。
- 低プロファイル設計:
高さを抑えた横置き形状により、視覚的な圧迫感を排除。Apple製品と親和性の高いアルミニウム仕上げは放熱効率を向上させ、長時間の高負荷通信でも熱スロットリングを抑制します。 - HID専用ポートの分離:
前面にUSB-A 2.0ポートを配置。マウスやキーボード等の低速なHID（Human Interface Device）を、背面側の高帯域データフローから論理的に分離して接続可能です。
ポチップ
④ Belkin Connect Pro Thunderbolt 4 Dock
Appleの厳しい品質基準をクリアし、信号の純度（ノイズ抑制）と接続の再現性に定評のあるモデルです。
- 高精度なシグナル整合性:
内部回路のシールド設計が厳格で、高解像度出力時やオーディオインターフェース接続時の電磁干渉を最小化。4K/60Hzのデュアル出力においても、同期ズレのない安定した信号伝送を維持します。 - 90W PDの安定供給:
PC側への安定した電力供給を維持しつつ、背面の周辺機器用ポートへも適切な電力を分配する設計がなされています。
ポチップ
03. 【実用・特定ニーズ拡張】通信ロジックの最適化
特定の通信プロファイル（ハブ機能やOS互換性）を重視し、実利的な拡張を目的としたモデル群です。
⑤ UGREEN Revodok Max 213
最新のインターフェースチップを採用し、8K出力と高負荷時の発熱抑制を両立した13-in-1モデルです。
- 8K出力への対応:
HDMI 2.1ポートを搭載し、シングルモニター時で最大8K解像度をサポート。高精細な映像編集環境を、コストを抑えて構築可能です。 - サーマルマネジメント:
内部の温度監視回路が動作状況をリアルタイムに制御。長時間のデータ転送においても通信速度を維持する設計がなされています。
ポチップ
⑤ OWC Thunderbolt 4 Dock
Thunderboltハブとしての機能を最大化し、高速デバイスの「デイジーチェーン」による帯域共有を排除する設計のモデルです。
- ダウンストリーム・ポートの拡充:
背面に3つのThunderbolt 4ポートを独立して配置。各ポートに直接SSDやモニターを接続できるため、単一のポートに負荷が集中するのを防ぎ、トータルでのデータスループットを最大化します。
ポチップ
⑦ Anker 564 USB-C ドッキングステーション (10-in-1)
M1/M2/M3チップ搭載Mac等の「外部モニター出力制限」を論理的に打破し、高解像度なマルチモニター環境を構築するための最適解です。
- DisplayLinkチップによるトリプル4K出力:
PC側の映像出力制限（Alt Modeの帯域制限）に依存せず、専用ドライバを介して最大3枚のモニターすべてで4K解像度（60Hz/30Hz）の同時出力を実現。MacBook Air等の外部出力が1枚に制限されている機体でも、広大な作業領域を確保可能です。 - 100W PD供給と多様なポート:
標準的なUSB-C接続ながら、最大100Wの給電に対応。USB-A 3.2 Gen1ポートを複数備え、既存の周辺機器資産を1本のケーブルに安定して集約できます。
ポチップ
04. 結論：用途別スペック比較と選定の指針
ドッキングステーションの選定は、自身のPCが持つ「ホストポートの規格」と「必要とする映像出力系統」に基づく物理的なマッチング作業です。
| 製品名 | 最大PD給電 | 通信規格 | 映像出力（最大） |
| CalDigit TS4 | 98W | Thunderbolt 4 | Dual 4K/60Hz |
| Anker 778 | 100W | Thunderbolt 4 | Quad 4K/60Hz (Win) |
| Anker 564 | 100W | USB-C (DisplayLink) | Triple 4K (Mac対応) |
- 最多の18ポートと、有線LAN・SDカードの物理転送速度を極めるなら: CalDigit TS4
- Windows環境で多画面（3〜4枚）を構築し、省スペースに置くなら: Anker 778
- 外部モニター出力数に制限のあるMacで、4Kの3画面環境を実現したいなら: Anker 564
これらの製品はすべて、前回の記事で解説した「セルフパワー駆動」による安定した電力供給を前提としています。自身のPCスペックを確認の上、必要なポート構成に合致するモデルを特定してください。
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