前回の記事で、あなたの相棒となる「最強のモニター」は決まりましたか? もし、届いたモニターを「付属のスタンド」のままデスクに置こうとしているなら、少しだけ待ってください。
そのスタンドは、あなたのデスクの中で「最も価値のある場所」を占領しようとしています。
モニターの真下の空間。 ここは本来、読み書きをしたり、キーボードを収納したり、お気に入りのガジェットを飾ったりできる「デスクの一等地」です。 そこをプラスチックの台座で潰してしまうのは、土地の無駄遣い以外の何物でもありません。
今回は、デスクの一等地を取り戻し、見た目も劇的に美しくするツール「モニターアーム」の導入について解説します。 これは「かっこつけるため」の道具ではありません。「デスクを広く使うため」の実用品です。

1. スタンドは「邪魔」である
厳しい言い方になりますが、モニターに最初からついているスタンドは、あくまで「仮設用」と考えてください。
なぜなら、構造上どうしても「脚」が必要だからです。 最近の大型モニターを支えるために、脚は巨大化する一方です。デスクの奥行きが60cmしかないのに、スタンドが20cmも場所を取っていたら、残りのスペースでどうやって作業をすればいいのでしょうか?
解決策:アームで「空中に固定」する
モニターアームを使えば、デスクとの接点は「クランプ(留め具)」のわずか数センチだけになります。
- Before: 巨大な台座がデンと鎮座し、キーボードを奥に追いやる。
- After: モニターが空中に浮き、下の空間がすべて「空き地」になる。
この生まれたスペースに、ノートPCを開いてもいいですし、好きなフィギュアを置いてもいい。 「物理的な広さ」を手に入れる最も手っ取り早い方法は、大きなデスクを買うことではなく、「モニターを浮かせること」です。
2. 最強の「空中配線」システムとして
以前の配線整理の記事で、私たちは「ケーブルを床に置かない」ことの重要性を学びました。 実は、モニターアームは「配線隠し」の役割も担っています。
優れたアームには、内部にケーブルを通すための「収納ルート」が用意されています。
- モニターから出たケーブルを、アームの中(または裏)に通す。
- そのままデスクの天板裏まで誘導する。
こうすることで、正面から見た時に「ケーブルが一本も見えない」という、魔法のようなデスクが完成します。 モニターがまるで空中に浮遊しているかのようなこの景色は、一度体験すると元には戻れません。
3. なぜ「エルゴトロン」一択なのか?
Amazonで「モニターアーム」と検索すると、3,000円くらいの安い製品から、2万円を超えるものまで無数に出てきます。 初心者はここで安物を選びがちですが、ここだけは絶対にケチってはいけません。
エンジニアの界隈では、答えは一つです。 「Ergotron(エルゴトロン)」を選んでください。
安いアームの悲劇
安いアームは、中のバネや関節の作りが甘いため、以下のようなストレスが発生します。
- お辞儀する: 重さに耐えきれず、モニターがだんだん下を向いてくる。
- 動かない: 位置を変えようとすると「ギギギ…」と硬く、両手で格闘することになる。
- 揺れる: キーボードを打つたびに、画面がプルプル震える。
エルゴトロンの凄さ
少し高価ですが、その価値は十分にあります。
- 指一本で動く: まるで無重力のように、スルスルと動き、ピタッと止まります。
- 一生モノの耐久性: 金属の剛性が高く、10年使ってもヘタりません。
- デザイン: 機能美の塊のような洗練されたデザインで、デスクの品格を上げます。
おすすめは定番の「LX」シリーズです。迷ったらこれを買っておけば、将来モニターを買い替えても使い続けられます。
▼ これがエンジニアのド定番「エルゴトロン LX」
4. 設置は「挟むだけ」
「設置が難しそう…」と不安になる必要はありません。 デスクの天板を挟み込んでネジを回すだけ(クランプ式)なので、工具不要で、デスクに穴を開ける必要もありません。
注意点: モニターの背面に「VESAマウント(正方形のネジ穴)」があるかだけは確認してください。
まとめ:デスクの「主導権」を取り戻そう
モニターアームは、単なる固定器具ではありません。 「デスクの空間をどう使うか」という主導権を、モニターからあなた自身に取り戻すためのツールです。
- 広さ: 巨大なスタンドを撤去し、デスクを一気に広くする。
- 美しさ: ケーブルをアーム内に隠し、空中に浮かせる。
- 品質: エルゴトロンを選び、ストレスフリーな操作感を得る。
これで、広くて美しいデスク環境が整いました。 ハードウェアの準備は完璧です。
しかし、最後に一つだけ残された問題があります。それは「あなた自身の身体」です。 いくら良いモニターとアームがあっても、配置の高さや距離を間違えると、深刻な「肩こり」や「眼精疲労」を招きます。
次回はシリーズ最終回。エンジニアが知っておくべき「疲れない配置の黄金比」について解説します。
【モニター環境構築シリーズ:全記事一覧】
- 第1回(選び方): 【モニターの正解】「デュアル」か「ウルトラワイド」か。作業効率が劇的に上がる「最適解」の選び方
- 第2回(設置): 【モニターアームの美学】ただ浮かせるだけじゃない。デスクの「一等地」を取り戻す唯一の方法 ※この記事
- 第3回(調整): 【疲れないデスクの科学】「目が疲れる」「肩が凝る」はモニターの高さが9割。エンジニアが守る「配置の黄金比」



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